【メンタルヘルスに良い食べ物とその効果】ストレスマネジメント研修の内容と感想
現代の職場では、ストレスが大きな問題となっています。その解決策の一つとして注目されているのが「食事の見直し」です。
私は、福島県須賀川市を拠点に、郡山市や福島市など福島県内、また山形・栃木・宮城など近隣県の企業・団体・施設様でメンタルヘルス研修の講師を務めていますが、従業員のストレスマネジメントに関する研修で、食べ物についての講義を行なうことがあります。
この記事では、研修で取り上げたメンタルヘルスと食べ物の関係について、受講者の感想を交えながら紹介します。
目次
ストレスマネジメントと食べ物の関係

脳の神経細胞は、さまざまな神経伝達物質を通して情報をやり取りしています。必要な栄養素が足りずに神経伝達物質が十分生成されないと、正常な脳の働きが阻害され、以下のようなさまざまな心身のトラブルを招くリスクが高まります。
- 抑うつ状態になる。
- 活力が失われて動けなくなる。
- 集中力や判断力が乏しくなる。
- 不安や罪責感などが押さえられなくなる。
- 不眠や過眠を引き起こす。
- 食欲不振や過食の状態になる。
これらの状態に陥れば、当然仕事の生産性が落ちてしまい、場合によっては休職や退職といった問題にまで発展しかねません。
また、食事の内容は体内の活性酸素やストレスホルモンの量、血糖値、腸内環境とも深く関わっていて、メンタルヘルスに影響を与えます。
栄養バランスの取れた食事は、神経伝達物質の生成を促して、ストレスへの耐性を高め、不安や抑うつといったネガティブな気分を軽くする効果が期待できます。
ストレスマネジメントにつながる栄養素

特に以下の栄養素は、メンタルヘルスに良い影響を与えることが知られています。
(1) オメガ3脂肪酸
DHAやEPA、ALAなどのオメガ3脂肪酸は、神経伝達物質の働きを促進し、抑うつや不安などのネガティブな精神症状を抑えてくれます。
また、慢性的な炎症がメンタルヘルスの問題を引き起こす場合がありますが、オメガ3脂肪酸はその炎症を予防したり軽くしたりする効果があります。
オメガ3脂肪酸を多く含む食材は、
- 魚類……サーモン、マグロ、イワシ、サバ、ニシン
- 植物性食品……亜麻仁(フラックスシード)、チアシード、クルミ
- オイル……亜麻仁油、エゴマ油
焼き魚やサラダにチアシードやクルミをトッピングすると簡単に摂取できます。
(2)ビタミンB群
ビタミンB群(特にビタミンB6)は、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンといった「気分に関わる神経伝達物質」の合成に必要な栄養素です。
ビタミンB群が十分に摂取できると、ストレスが軽減され、エネルギーレベルの維持に役立ちます。すなわち、疲労感やイライラ感が軽くなります。
ビタミンB群を豊富に含む食材は、
- 肉類……鶏むね肉、豚肉(特に赤身)
- 魚類……サバ、マグロ、サーモン
- 植物性食品……バナナ、アボカド、ジャガイモ、ひよこ豆
- 全粒穀物……全粒パン、玄米、オートミール
忙しい朝には、オートミールとバナナを組み合わせると手軽に摂取できます。
(3) トリプトファン
トリプトファンは、セロトニンの原料となるアミノ酸です。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質で、睡眠、食欲、気分の調整に関与しています。
またトリプトファンはメラトニンの生成にも欠かせません。メラトニンは辺りが暗くなると量が増えて、安らかな眠りを誘う性質があります。
ですから、トリプトファンを十分に摂取すると、夜中の不眠から解放されたり、食欲不振や過食が抑えられたり、気分の落ち込みが解消したりすることが期待できます。
トリプトファンを多く含む食品は、
- 動物性食品……鶏肉、七面鳥、卵、乳製品(ヨーグルト、チーズ)
- 植物性食品……大豆製品(豆腐、納豆、枝豆)、ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ)、種子(かぼちゃの種)
- 全粒穀物……キヌア、玄米、オートミール
夜に温かい牛乳を飲むと、トリプトファンの摂取だけでなくリラックス効果も期待できます。
(4) マグネシウム
マグネシウムは、神経伝達物質の調整やストレスホルモン(コルチゾール)の抑制に関わっています。適切な量を摂取することで、精神的なストレスが軽くなります。
マグネシウムを多く含む食品は、
- 種子・ナッツ類……かぼちゃの種、アーモンド、カシューナッツ
- 葉物野菜……ほうれん草、ケール
- 全粒穀物……玄米、キヌア
- 豆類……黒豆、ひよこ豆、レンズ豆
- その他……ダークチョコレート(カカオ含有量70%以上)
小腹がすいた時には、ダークチョコレートやナッツをおやつにしてみましょう。

(5) ビタミンD
セロトニンの生成をサポートするため、うつ症状や不安感の軽減が期待できます。
ビタミンDを多く含む食材は、
- 魚類……サーモン、サバ、イワシ
- キノコ類……マイタケ、シイタケ(天日干しするとビタミンD含有量が増えます)
- 乳製品……ビタミンD強化牛乳、ヨーグルト、シリアル
魚のグリルやキノコの炒め物を定期的に食べると効率的です。
(6) 鉄分
鉄分は赤血球に含まれるヘモグロビンの生成を助けます。その結果、脳に多くの酸素が届けられ、集中力や判断力が増したり、気分が安定したり、疲労回復が早まったりします。
鉄分を含む主な食材は、
- 動物性食品(ヘム鉄)……牛肉、鶏レバー、牡蠣
- 植物性食品(非ヘム鉄)……ほうれん草、小松菜、豆類(レンズ豆、ひよこ豆)、キヌア
また、鉄分の吸収を助ける栄養素としてビタミンCが挙げられます(後述)。レモン汁をかけたほうれん草のサラダなどはいかがでしょうか。
(7) 亜鉛
抗うつ効果が報告されており、不足すると抑うつや不安が増加する可能性があります。
亜鉛を多く含むのは、
- 動物性食品……牛肉、豚肉、鶏肉、牡蠣
- 植物性食品……かぼちゃの種、ひまわりの種、ナッツ類(カシューナッツ)
- 全粒穀物……玄米、全粒パン
かぼちゃの種をスナックとして食べると、簡単で効果的に亜鉛を摂取できます。
(6) 抗酸化物質(ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール)
活性酸素によるストレスを軽くしてくれます。特にビタミンCは、ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを低下させたり鉄分の吸収を助けたりして、ストレスの軽減に寄与します。
抗酸化物質を多く含むのは、
- ビタミンC……オレンジ、キウイ、パプリカ、イチゴ、ブロッコリー
- ビタミンE:……アーモンド、ひまわりの種、アボカド
- ポリフェノール……ブルーベリー、クランベリー、緑茶、ダークチョコレート(カカオ含有量70%以上)
朝食にフルーツサラダを加えることで手軽に摂取できます。
なお、市販の野菜ジュースやフルーツジュースは、糖分や塩分が高くてかえって健康を損ねるリスクがあると共に、うつ病のリスクを高める可能性も指摘されています。ジュースを野菜や果物の代わりにしないようにしましょう。
(7) プロバイオティクス
腸内環境がメンタルヘルスに影響を与えることが知られています。プロバイオティクスはこの腸内環境を整えてくれます。
主な食材としては、
- 発酵食品:ヨーグルト、キムチ、納豆、味噌、ザワークラウト
味噌汁や納豆を日常の食事に取り入れるのは、日本の食文化に合った方法です。
メンタルヘルスに良い食べ物を取り入れるコツ

(1) 朝食をしっかり摂る
朝食を抜くと、血糖値が不安定になり、イライラや集中力低下につながります。玄米や全粒粉のパン、フルーツを取り入れると効果的です。また、味噌汁や納豆、ヨーグルトなどの発酵食品も積極的に摂取しましょう。
(2) 間食をヘルシーに
お菓子やスナックではなく、ナッツやドライフルーツ、カカオ含有量の高い(70%以上)チョコレートを選びましょう。また、砂糖の入った飲料は、うつ病リスクを高める可能性があるとの研究がありますので、取り過ぎに注意してください。
(3) 外食でも栄養バランスを意識
外食や出張が多い方は、魚料理や野菜が豊富なメニューを選ぶよう心がけると良いでしょう。
(4) ストイックになりすぎない
食事はメンタルヘルスにとって重要な要素です。しかし、気にしすぎや我慢しすぎはかえってストレスの元になってしまいます。普段は栄養バランスを考えた食事をしながらも、たまに好きなメニューを楽しむことは、ストレスマネジメントにとって大切です。
なお、いくらメンタルヘルスに効果的だといっても、特定の栄養素や食材ばかり摂っていては、全体の栄養バランスを崩してしまってかえって健康に逆効果です。炭水化物・タンパク質・脂質・ミネラルなどさまざまな栄養素を、バランス良く摂取しましょう。
(5) 補助食品はあくまでも補助
健康補助食品やサプリメントは、あくまでも普段の食事の補助ととらえましょう。
受講者の声

食べ物とメンタルヘルスの関係について触れたストレスマネジメント研修の後にいただいた、感想の一部をご紹介します。
感想1:管理職の方
「職場のストレスケアの重要性を改めて実感しました。これまで受けてきたメンタルヘルス対策は心理的な面が中心でしたが、食事がここまで影響するとは驚きです。家での食事はバランスが取れていると思いますが、社食での昼食や出張時の食事を見直したいと思います。」
感想2:若手社員の方
「一人暮らしなので、ついついコンビニ飯や外食で済ませてしまったり、市販のジュースで野菜不足を補った気になっていたりして、栄養が偏っていたなあと反省しました。これからは意識してバランスの良い食事を心がけます。」
感想3:総務部の方
「福利厚生の一環として、社員の健康をサポートする取り組みが必要だと感じました。メンタルヘルスと食事の関係を分かりやすく説明していただき、目からウロコでした。気にしすぎも良くないと教わりましたので、気軽に取り組みたいと思います。」
まとめ

メンタルヘルスと食べ物の関係は、科学的にも裏付けられており、ストレスマネジメントにおいて重要な要素の一つです。
私が講師を務めるストレスマネジメント研修は、食事に関する情報だけでなく、さまざまな効果的な方法を具体的に紹介しています。多くの参加者から「日常にすぐ取り入れられる内容だった」「ワークやディスカッションの時間が楽しくて、参加するだけでストレスが解消された」という評価をいただいています。
企業の福利厚生やメンタルヘルス対策の一環として、ストレスマネジメント研修を実施したい企業の担当者様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。ご連絡は、以下の公式サイトからお願いします。
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