心理的リアクタンスと指示方法【役に立つメンタルヘルス研修@福島県】
「どうして部下は自分の指示に従ってくれないのだろう?」と感じた経験はありませんか?
職場で上司やチームリーダーが部下に指示を出しても、それが素直に受け入れられず、場合によっては反発を招いてしまうことがあります。その原因の一つが、「心理的リアクタンス」と呼ばれる心のカラクリです。
私は、須賀川市や郡山市を中心に、福島県内や近隣県でメンタルヘルス研修を行なっています。研修内容は、主催する企業・団体・施設さまの要望に応じて研修内容を決定していますが、抵抗を引き起こしにくい指示の出し方について解説することもあります。
この記事では、心理的リアクタンスに関する基本知識と、それを踏まえた指示方法について解説します。
目次
心理的リアクタンスとは
心理的リアクタンスとは、アメリカの心理学者ジャック・ブレームが1966年に提唱した概念です。「自分の自由が制限されたり、奪われたりすると、それに抗おうとする心理」のことです。
子どもの頃を思い出してみてください。たとえば宿題をやらなければならないのに、親から「早く宿題を始めなさい!」と言われて、途端にやる気が失せてしまった経験がありませんか?
この心理リアクタンスが職場で起きるとどうなるでしょうか。上司が指示・命令をした場合、仮にそれが合理的な内容であっても、従業員が抵抗を感じて逆らいたい気持ちになります。
すると、たとえ面と向かって反発したり、指示を無視したりしなかったとしても、従業員のやる気は大幅に低下するでしょう。その結果、職場の雰囲気が悪くなったり、生産性が低下してしまったりしかねません。
心理的リアクタンスが生じやすい状況
行動を強制される
「絶対やるべき」、あるいは「絶対やるべきではない」といった強い言葉で指示されると、かえって自由を求めて反発したくなります。
選択肢が制限される
複数の選択肢があるはずなのに1つしか選ばせてもらえないと感じると、指示された選択肢以外の行動を選びたくなります。
脅迫される
自分や自分の関係者に対する昇進の妨害、降格、クビ、人事評価の低下、暴力などを予告して行動を強制されると、指示された行動と恐怖や不安の感情が無意識の中で結びつきます。その結果、指示された行動を避けたくなります。あるいは、そのような理不尽な要求に対して怒りを覚え、決死の反発をしたくなります。
嫌みを言われる
「入社して3年目なのにそんなこともできないの?」「○○大学卒業なら、それくらい言われなくてもやってもらわないと」などと嫌みを交えて指示されると、羞恥心が刺激されて腹が立ち、反発したくなります。
餌で釣られる
指示通りに行動したら昇進等のご褒美をあげるというようなやり方は、効果がある一方で注意も必要です。もしも「うまく操作されようとしている」と部下が感じると、子ども扱い、あるいはロボット扱いされたような気になって腹が立ち、反発したくなります。
心理的リアクタンスを引き起しにくい指示の方法
職場における心理的リアクタンスを回避して、上司と部下の円滑なコミュニケーションを実現するためには、指示や命令の伝え方に工夫が必要です。ポイントは、「強制されている感じ」をできるだけ部下に与えないような表現の仕方をするということです。たとえば、
相手の意見も尋ねる
一方的に指示・命令を与えるのではなく、相手の意見も引き出します。「私としてはこの方法で進めるのが良いと思うんだけれど、他にアイデアがあれば提案して欲しい」というふうに。そして、どの方法を選ぶか一緒に話し合いながら検討します。
話し合いの結果、上司の案が最終的に通ったとしても、部下は自分の意見も聞いてもらえたと満足しますし、話し合いを通じて納得もしますから、ほとんど反発を覚えません。
選択肢を与える
「やり方としては、このA案からD案の4つが考えられるんだが、君はどのやり方でやってみたい?」というふうに複数の選択肢を示し、最終的には相手に選んでもらいます。
選択肢を示すことは、それ以外の選択肢を除去していることになるわけで、部下に完全な自由を与えてはいません。それでも、選択肢の中のどれを選ぶかという自由は保障しているため、「自由を奪われた」と感じさせにくい表現方法です。
理由を添える
「午後1時から緊急にA社と打ち合わせをしなければならなくなったから、午前中のうちにこちらの資料をまとめてほしい」というふうに、その指示をするに至った理由を説明すると、納得感が高まって素直に指示を実行しやすくなります。
期待する行動を明確に伝える
初めて指示される業務について、「この資料、うまいことまとめて」のような抽象的な表現をされると、部下はどう行動していいか分からず戸惑うばかりでなく、「自分で考えて私が気に入るような行動をせよ」と強制されているように感じます。その結果、実行しようというやる気を削いでしまいます。
そこで、「この資料を見て、商品の顧客にとってのメリットをA4用紙1枚にまとめて」というふうに具体的な行動を指示するようにします。
お願いモードで伝える
「しなさい」という言い方より、「してくれないか」「して欲しいんだが」というお願いモードの伝え方の方が、反発を招きにくいです。
事後の肯定的リアクション
上司の指示に従うといい気持ちになれた。そういう体験をすると、また指示に従おうという思いが湧いてくるものです。ですから、指示をするときのことばかりでなく、部下が指示に従った後のリアクションにも気を配りましょう。
感謝
感謝は相手に大きなエネルギーを与え、うれしい気持ちを引き出します。部下が「分かりました」と指示を受け入れてくれたとき、そして指示を実行したときに、「ありがとう」と感謝を表します。
部下が上司の指示に従うのは当たり前です。しかし、当たり前だとスルーせず、しっかりと感謝を表現しましょう。
喜びの表明
部下が指示通りに行動してくれたとき、「指示通りに資料を作ってくれて助かったよ」「君が作ってくれた資料、担当者さんが分かりやすいってほめてくれたよ。私も鼻が高かった」というふうに、喜びの気持ちを表現します。
上述の感謝と合わせて使うと、さらに効果的です。
心理リアクタンスとメンタルヘルスの関連
心理的リアクタンスを理解して指示の方法を改善することは、従業員のメンタルヘルスの観点からも非常に重要です。強制的な指示が続くと、従業員は心理的な圧迫を感じてストレスをためてしまいます。
そして、このストレスが長期化すると、うつ病や自律神経失調症などを発症して休職したり、職場に幻滅して退職したりするなど、深刻な問題に発展する恐れがあります。
しかし、心理的リアクタンスに配慮した指示方法を実践すれば、上記のようなリスクを軽減させることができます。そればかりか、逆に従業員のモチベーションを高め、生産性を向上させたり、企業イメージアップさせたりすることが可能です。
私が提供するメンタルヘルス研修
私が企業・団体・施設さまに呼ばれて実施するメンタルヘルス研修では、心理的リアクタンスを踏まえた指示の仕方に関するレクチャーも行ないます。以下は、指示の仕方に関する研修の内容例です。
- 心理的リアクタンスとは
- 心理的安全性の必要性
- 抵抗を生みにくいコミュニケーションスキル
- 心理的安全性を高める職場環境の作り方
これらを、実践演習やディスカッションを豊富に交えながらお伝えします。研修の内容は、主催者さまの要望に合わせて柔軟にカスタマイズしています。
研修後、しばらく後にいただいたアンケートでは、
- チーム全体のやる気がアップしてきた気がします。
- これまで、思い通りに部下が動いてくれなくて私自身ストレスを感じていましたが、部下との関係が改善してストレスが減りました。
- 子育てにも使ってみましたが、以前より子どもが指示通りに行動してくれるようになりました。
などの肯定的な感想をいただいています。
まとめ
企業の組織は、上下関係がはっきりしています。それだけに心理的リアクタンスは見過ごされがちな課題ですが、その影響は計り知れません。適切な指示方法を取り入れることで、従業員のストレスを軽減し、職場全体の生産性を向上させることができます。
心理リアクタンスその他の、メンタルヘルスに関する研修講師をお捜しの担当者さまは、ぜひ一度お問い合わせください。ご連絡は、以下の公式サイトまでお願いいたします。
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