職場のメンタルヘルスに潜む危険!【ラベリング効果】が引き起こす問題とその防止策
職場のメンタルヘルス対策において、思いのほか影響を与えがちな心理的要因が「ラベリング効果」です。ラベリング効果とは、他者から貼られる「レッテル」が、その人の自己認識や行動に影響を与えてしまう現象です。
ラベリング効果はプラスにもマイナスにも働きます。職場においてマイナスの影響を放置していると、生産性低下や従業員のモチベーション喪失などの問題につながる可能性があります。
この記事では、ラベリング効果のメカニズムや職場での具体例、その防止策について解説します。また、私が講師を務めた企業・団体・施設様でのメンタルヘルス研修参加者の感想も紹介します。
目次
ラベリング効果とは?

ラベリング効果とは、他者からの評価やそれに基づく言葉かけ、態度などによって、評価を受けた人の考え方や行動が影響を受ける心理現象です。
たとえば、「あの人は責任感がない」「彼は遅刻魔だ」「彼女はよくミスをする」などというレッテルを貼ると、本人はそのラベルに沿った行動を取るようになる可能性が高まるのです。
ラベリング効果はマイナスだけでなく、プラスにも働きます。「あの人は責任感がある」「彼は締め切り通りにタスクをこなす人だ」「彼女はていねいな作業をする」など、プラスのレッテルを貼ればプラスの行動を引き出しやすくなります。
ラベリング効果が起こるメカニズム

(1) 他者からの評価とラベリング
他の人が対象者に、「あの人はこういう人だ」という固定化されたレッテルを貼ります。このラベリングは、ある程度事実に基づく評価によるものだったり、まったくの誤解や偏見に基づくものだったりします。
(2) フィルタリングとラベリングの強化
対象者にラベリングをすると、そのラベル(レッテル)に合致する情報が入りやすくなり、逆に合致しない情報ははじかれてしまうようになります。
たとえば、対象者に対して「あいつはすぐに感情的になる」というレッテルを貼ると、対象者はほとんどの時間を穏やかに過ごしているにもかかわらず、ほんのわずかな感情的になった例外を特別に注目し、「ほらやっぱり、あいつは感情的だ」と、最初のラベリングが強化されていきます。
(3) ラベリングに基づく言動
ラベリングした人は、対象者を前にすると、ラベリングに応じた言動をしがちです。たとえば、
- 「君はいつもこうだよね」「君はこういう性格だよね」などと本人に直接語る。
- 陰で対象者のレッテルについて話題にする。
- 対象者がレッテル通りの行動をしたときに、嫌な顔をしたり、ネチネチと責めたり、ため息をついたりする。
(4) 自己ラベリング
対象者は、自分が他の人からどう見られているか、どんなレッテルを貼られているかを理解するようになります。その理解は無意識レベルにまで浸透し、「自分はこういう人間である」という他者からのラベリング通りの自己認識に発展します。
(5) 無意識の行動化
無意識レベルの自己認識、無意識のセルフイメージは、私たちの行動に強烈な影響を与えます。
たとえば「私は遅刻魔であり、時間通りに行動できない人間だ」という無意識レベルのセルフイメージを持ってしまうと、そのイメージが正しいことを証明するような行動を取り始めます。すなわち、始業時間や待ち合わせに遅刻したり、締め切りを守れなかったりするようになるのです。
職場におけるマイナスのラベリング効果

職場では、以下のようなシーンでマイナスのラベリング効果が発生しやすいです。
(1) ネガティブ評価の宣言
「君はミスが多い」などと、マイナスの評価を本人の前で言い切ること。上司はミスをして欲しくないという願いを込めてそう宣言するのですが、ラベリング効果が発動して、本人はますますミスをするようになります。そうでなくても、その評価が伝われば本人のやる気を削いでしまうでしょう。
(2) ポジティブな評価の押しつけ
「営業部のエースなのだから失敗は許されない」などといったプレッシャーを与えること。「君は営業部のエースだ」という評価自体はいいのですが、それにネガティブな要素(この例の場合には「失敗したらひどい目にあわせるぞ」と受け取れる脅し、あるいは叱咤激励)が付け加わっているのがポイントです。
この脅しには「君はいざというときに失敗する人間だ」という評価が含まれています。もし、絶対に失敗しない部下なら、失敗を前提とした脅しは行なわれないはずだからです。
そこで、失敗を前提とした脅しや叱咤激励をされた部下の無意識は、「私は営業部のエースだ」という肯定的な自己認識ではなく、「私は絶対失敗する」という否定的な自己認識を持ってしまいます。その結果、「失敗したらどうしよう」と萎縮してしまい、本来のパフォーマンスを発揮できなくなってしまう恐れがあります。
(3) 無意識の偏見
性別や年齢、出身地、出身校などに基づく先入観が、評価や役割分担に影響する場合。偏見、先入観は、部下が実は有している素晴らしい資質を発揮できなくさせてしまいます。
マイナスのラベリング効果が職場に及ぼす具体的なリスク

(1) ストレスと生産性の低下
ラベルが否定的であるほど、社員は自信を喪失し、仕事への意欲が減少します。その結果、ますますミスが増えるなどのマイナスの行動が目立つという悪循環に陥るでしょう。
(2) チームワークの悪化
ラベリングによる偏見は、職場の人間関係にも悪影響を与えます。たとえば特定の社員が「頼りない」などのマイナスのレッテルを貼られてしまうと、その人は孤立し、チーム全体の連携が崩れてしまいかねません。
(3) 休職・離職リスク
マイナスのラベリング効果が続くと、社員が職場に居場所を感じられなくなったり、心を病んでしまったりして、休職したり離職を選択してしまったりする場合があります。このような事態は、企業にとって大きな損失となります。
職場で否定的なラベリング効果を防ぐための具体策

(1) 公正な評価基準を設ける
マイナスのレッテル貼りが生じないよう、具体的かつ透明性のある評価基準を導入しましょう。社員の行動を数値や事実に基づいて評価することで、主観的な偏見に基づくラベリングを減らせます。
(2) 定期的な個別面談を実施する
上司と部下が互いの考えを共有する場を設け、誤解や偏見を解消する機会を作りましょう。
(3) 肯定的なラベリングを心がける
ラベリングするなら肯定的なレッテルを貼りましょう。あらゆる点において100%マイナスの社員下など存在しません。必ずプラス面があります。上司や同僚はそれを意識して見つけ出し、フィードバックしましょう。
(4) メンタルヘルス研修を導入する
ラベリング効果を正しく理解し、職場環境を改善するためには、福利厚生の一環としてのメンタルヘルス研修が有効です。専門家による指導を受けることで、具体的な対策を学べます。
私は、福島県須賀川市を拠点に、郡山市や福島市など福島県内、また山形・栃木・宮城などの近隣県で、企業・団体・施設様でメンタルヘルス研修の講師を務めています。私の研修では、よく「短所を手がかりとして長所を探す」ワークショップを行ない、大変好評をいただいています。
実際の研修で得られた受講生の声

以下は、私が実施したメンタルヘルス研修を受講した方々の感想です。
福祉施設勤務・40代女性
「職場でのコミュニケーションを見直したいと思いました。具体的な方法も教えていただいたので、さっそく職場や家庭で実践してみたいです。」
製造業勤務・30代男性
「自分の思い込みや言動が、部下に強い影響を与えていたと気づかされました。部下の評価の仕方を見直し、より公平なマネジメントを心がけたいと思います。」
サービス業勤務・20代女性
「楽しかったです。あんなに笑った社員研修は初めてです。特に、ワークで自分が気づかなかった持ち味を知ることができてうれしくなりました。」
まとめ

職場におけるラベリング効果は、社員のメンタルヘルスや生産性に大きな影響を及ぼします。しかし、公正な評価基準の導入やメンタルヘルス研修の実施などにより、これを防止し、職場環境を改善することが可能です。
参加者の声にあったような「楽しいメンタルヘルス研修」にご興味のある担当者さまは、ぜひ公式サイトからお気軽にお問い合わせてください。
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