パワハラにならない指導法【須賀川・郡山】メンタルヘルス研修
昨今、パワーハラスメント(パワハラ)が問題行動であるとの認識が広まってきました。パワハラが横行している職場は、部下が萎縮してかえって生産性を低下させたり、退職者が増えたりしてしまいます。下手をすると訴訟問題に発展することも。
そのようなわけで、多くの企業でパワハラ防止の取り組みが成されています。しかし、企業において上司が部下を指導することは必要不可欠です。にもかかわらず、パワハラを恐れるあまり、どのように部下を指導したらいいか分からず、戸惑う上司の方々も多くいらっしゃいます。
今回の記事では、パワハラにならない指導法について具体的に紹介します。
目次
尋常な指導とパワハラの違いを理解する
尋常な指導とパワハラの違いを明確に理解することは、職場での指導法を考えるうえで非常に重要です。
目的の違い
「指導」は、業務の遂行能力を高めるための指示や助言であり、その目的は部下や後輩の成長を促すことです。
一方、パワハラは上司や先輩がその地位や権限を利用して、下位者に対して不当な圧力をかける行為です。その目的は、部下や後輩の成長ではありません。自分自身の優位性をアピールすることであったり、支配欲を満足させるためであったりします。
パワハラを行なう上司も、口では「部下を指導している」「部下を成長させるためだ」と言います。しかし、ここで問題にしているのは表面的な目的ではなく、本音の目的です。
効果の違い
指導の結果を見てみましょう。
尋常な指導ならば、部下や後輩は仕事に対してやる気を引き出され、以前よりも効果的に業務を遂行できるようになっているはずです。
もしも、部下の業務のやり方に変化が見られなかったり、萎縮して会議などで建設的な意見を出せなかったり、企業に対するコミットメントが低下したりしているならば、上司の言い分はどうであれその「指導」にはどこか問題があると言わざるを得ません。
問題にするポイントの違い
尋常な指導において問題にするのは、部下や後輩の「行動」です。どの行動が問題で、それがなぜ問題なのか、そして今後どのような行動を取るべきかを指摘します。
一方、パワハラにおいては、相手の人格を否定したり値引いたりします。人間としての価値、企業人としての価値を否定するのです。たとえば、「できそこない」「バカ」「給料泥棒」「無能」などの言葉です。
やる気の引き出し方の違い
尋常な指導では、部下や後輩の可能性や過去の成功体験に注目して指摘することによって、やる気を引き出そうとします。
一方、パワハラでは、相手の嫌な感情を刺激することによってやる気を引き出そうとします。
- 解雇や降格などを臭わせて相手を脅し、不安感を刺激する。
- 「入社して3年も経つのに、そんなこともできないのか?」「だから高卒はダメなんだ」などと嫌みを言って、自尊心を損なわせる。
- 「お前のせいでみんな迷惑しているんだぞ」と罪責感を刺激する。
表現の違い
パワハラでは相手を萎縮させて自分の優位性を示すすることが目的なので、攻撃的な表現をして相手を屈服させようとします。上述のような言葉以外にも、たとえば大声を出す、睨む、机を叩く、指を指すなどです。
一方、尋常な指導では攻撃的な表現は使いません。毅然と、しかし穏やかに、言葉を使って伝えようとします。
パワハラが発生する原因を改善する
パワハラが発生する原因は様々ですが、以下のような点が考えられます。これらを改善することで、パワハラを生み出しにくくできます。
上司のコミュニケーション能力の不足
- 感情をぶつけるばかりで、結局何が言いたいのか伝わらない
- 相手がどんな気持ちになるかを気に留めない表現を使う
- 相手を責めるばかりで、改善点を具体的に示さない
組織文化
- 「上司の言葉は絶対」という風土
- 失敗を赦さない雰囲気
- 競争が激しい
職場環境
- 業務量が多かったりノルマが厳しかったりして、精神的に余裕がない
- 指導者育成の制度が不十分
コミュニケーションの質を高める
聴く姿勢
上司が上、部下がしたという位置関係がパワハラの温床となります。確かに立場の違いはありますが、上司も部下も協力関係にあると考えましょう。そして、指導も一方通行でなく。相互理解に基づく協力関係にすることが大切です。
そのため、一方的にこちらの意見や指示を伝えるのではなく、相手の気持ちや考えをよく聴いた上で伝えるようにしましょう。
非言語コミュニケーションにも注意
私たち人間は、言葉だけではなく身振り手振りや視線、姿勢など、非言語的な手段でもコミュニケーションを取っています。また、同じセリフを語るにしても、声の大きさ、トーン、スピード、間の取り方などで、ずいぶん印象が違って聞こえます。
あなたの表情やジェスチャー、話し方は威圧感を与えるものになっていないでしょうか。改めて確認しましょう。自分では分かりにくいので、家族など身近な人にコメントしてもらうのがいいでしょう。
具体的で建設的な指摘
成長を促すための指導は、相手の行動を問題にしなければなりません。
- 相手のどんな行動が問題なのか
- どうしてそれが問題なのか
- 代わりにどのような行動(代替え行動)を取るべきか
特に代替え行動を示したり、一緒に考えたりすることが重要です。ダメなところだけを指摘していては、部下や後輩は自信を失い、仕事に対するモチベーションが下がってしまいます。
ポジティブなフィードバック
相手の望ましくない行動を指摘するだけでなく、望ましい行動も見つけてフィードバックしましょう。私はよく、「改善点の指摘を1回するなら、肯定的な指摘は10回」と申し上げています。
ダメ出しばかりの上司の言葉は、心をガードして聞こうとしません。みんな傷つきたくないからです。しかし、普段から肯定的な評価をしてくれる上司の言葉なら、多少厳しい指摘でも素直に聞いてくれます。
企業の研修で、「ほめるところが見つからない部下はどうしたらいいか」という質問をいただきます。私は、「素晴らしい所をほめようとするのではなく、『当たり前だけれどマイナスではない行動』を笑顔で指摘してみてくださいとお答えしています。
あるいは、感謝の種を見つけて「ありがとう」を伝えるようにしてください、と。
たとえば、「おー、気持ちのいいあいさつだねぇ」とか、「締め切り前に資料を作ってくれてありがとう」とか。上司にあいさつしたり、締め切りを守ったりするのは当たりまえ。それでも、あえてそれを拾って笑顔で指摘したり、感謝したりするのです。
すると、部下はうれしい気持ちになり、やる気が引き出されていくでしょう。そして、あなたが改善点を指摘しても素直に聞いてくれます。上司は自分をけなしているのではなく、成長を期待して指導してくれていると理解するからです。
怒りのコントロール
パワハラを防止するためには、怒りをコントロールすることが重要です。感情が高ぶった状態で指導を行うと、どうしても相手を罵倒したり、嫌みを言ったり、人格攻撃をしたりしてしまいがちです。
感情的な言動は、パワハラと誤解される可能性が高いため、常に冷静に対応することが求められます。
6秒ルールの活用
「ほめるときはすぐその場で、叱るときはちょっと待ってから」という原則があります。怒りを感じると、血液中にアドレナリンというホルモンが放出され、体と心が戦闘モードになります。このアドレナリンの血中濃度は、戦闘が始まらずに6秒経つと急激に低下します。
ですから、「あいつに一言言ってやらなくちゃ」と思ってもすぐに指導するのではなく、しばらく時間をおいてから行ないましょう。それにより、冷静に指導することができるようになります。
書き出す
また、紙の上に指導のポイント書き出すのも効果的です。先ほど申し上げた3つのポイント、
- 相手のどんな行動が問題なのか
- どうしてそれが問題なのか
- 代わりにどのような行動(代替え行動)を取るべきか
を書き出しましょう。書くことで冷静さを取り戻すことができます。
書けないということは自分でもよく分かっていないということです。自分でも分かっていないことが、他人に伝わるはずがありませんね。
まとめ
パワハラを恐れて指導ができないのでは困ります。上司は部下を指導するために存在しています。今回紹介したポイントを参考にして、部下や後輩をぐんぐん成長させられる指導を行なってください。
私は、福島県須賀川市や郡山市を中心に、福島県内、あるいは近隣県で企業向けメンタルヘルス研修を行なっています。経営者や上司向け、一般社員向け、メンタルを病んだ社員の家族向けの3つのグループが対象です。
経営者や上司向けの研修では、パワハラにならない指導法や、部下のやる気に引き出し方、メンタル不調の部下への接し方などについて教えています。
ご興味があれば、ぜひご相談ください。