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プラシーボ効果を生かす【上司のコミュニケーション術】メンタルヘルス研修の内容と感想

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部下に対する上司のコミュニケーションは、従業員のメンタルヘルスに大きな影響を与える要素の一つです。

本記事では、私が企業・施設・団体主催のメンタルヘルス研修で、上司による部下のストレスマネジメントについて取り上げた内容、特に「プラシーボ効果を用いた上司のコミュニケーション術」について解説します。また、研修に参加してくださった参加者の声も紹介します。

プラシーボ効果とは

薬

プラシーボ効果(プラセボ効果、偽薬効果)とは、実際には薬効成分が含まれていないのに、「効果がある薬だ」と信じることで、実際に効果が現われる現象を指します。

たとえば、胃潰瘍の患者にただの小麦粉を与え、「これは最近承認された、胃潰瘍に大変よく効く薬です」と偽って飲んでもらうと、胃潰瘍が本当に改善することがあります。

ノセボ効果

ノセボ効果とは、薬効成分がいっさい含まれていない偽薬なのに、それを飲むことによって副作用が起こる現象を指します。この現象は、副作用を気にしすぎる結果起こると考えられています。

プラシーボ効果もノセボ効果も、「心理的な思い込みによって心身に実際の影響が出てしまう」ということを示しています。

プラシーボ効果とメンタルヘルス

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プラシーボ効果は、医療分野だけでなく職場の人間関係やメンタルヘルス対策にも応用可能です。

たとえば、上司が部下に対して「あなたにはこの問題を解決する力がある」「あなたの努力は確実に成果を上げている」「この方法は非常に効果的だ」といった肯定的なフィードバックを与えると、部下のモチベーションや自信を高めることができます。

また、上司自身が部下の成長や成果を信じることで、ポジティブな雰囲気の職場環境を形成することができます。そのような職場は、無用なストレスを味わわなくて済む働きやすい環境です。

プラシーボ効果が企業にもたらす恩恵

上司がプラシーボ効果を引き出すようなコミュニケーションを実践している職場環境では、以下のような好循環が生まれます。

  1. 従業員のやる気が引き出され、積極的に望ましい行動をするようになります。
  2. 望ましい行動により望ましい結果がもたらされます。
  3. 良い結果によって従業員が自信を持ち、ますますやる気が引き出されます。

また、プラシーボ効果を引き出すようなコミュニケーションがなされている職場は、ストレスによって心身を病み、休職や退職をしてしまう従業員を減らすことができます。その結果、人員不足による過重労働の回避、採用や教育訓練にかけるコスト削減につながります。

そして、明るい職場、みんなが生き生きと働ける職場となり、就活生や取引先から好印象を持たれます。そうすると、人材確保や取引において大きなアドバンテージを得ることができるでしょう。

ノセボ効果が企業にもたらす弊害

一方、プラシーボ効果を引き出すようなコミュニケーションが実施されず、それどころか「君はダメな奴だ」というメッセージを伝え続けるようなコミュニケーションが取られている職場環境では、ノセボ効果が発動します。すると、上記とは真逆の悪い結果がもたらされるでしょう。

プラシーボ効果を生かす具体的なスキル

傾聴

(1) すでにその力があるという伝え方をする

上司は部下に「こういう能力や態度を身につけてほしい」「こういう成果を上げてほしい」と期待していることがあるはずです。

それを部下に伝える際に、「あなたには、それを達成できる力がある。だから必ずできる」「あなたは、すでにその能力を開花しつつある。だからもっとうまくやれる」という伝え方をします。

「今、あなたにはその能力がない。だからがんばってそれを身につけなさい」という伝え方をしないということです。

要するに、「あなたは今、マイナスである。だからプラスになれ」ではなく、「あなたはすでにプラスである。だからプラスの結果を出せる」「あなたはすでにプラスだから、そのプラスに磨きがかかる」という伝え方をするのです。

たとえば、

  • 「君は、自分が口下手だと言うけれど、自分の意見を押しつけずに他人の話をよく聴くことに長けている。だから、必ずお客様のニーズをつかんで、お客さまに喜ばれる提案ができるはずだ」。
  • 「あなたはとてもていねいに作業をするよね。これからもその調子で頼むよ」。
  • 「あなたの武器はいろいろな意見をまとめる調整力だと思う。それをこのまま伸ばしていけば、我が社にとって得がたいリーダーになれると僕は信じているんだ」。

(2) 短所を長所に言い換える

部下の良い面・可能性が見つからないときには、短所だと思っているものを手がかりにしましょう。

人の性格は、「行動パターンにつけたレッテル」です。その行動パターンがプラスに働けば長所、マイナスに働けば短所になります。自分や他人の短所も、行動パターンをプラスに働かせれば長所に変わります。

たとえば、「優柔不断」という短所は、「決断するのに時間をかける」という行動パターンにマイナスのレッテルを貼ったものです。決断に時間をかけた結果、チャンスを逃すというマイナスに働いたわけです。

しかし、この行動パターンがプラスに働けば、慌てて失敗したり詐欺に遭ったりするリスクが減るでしょうし、企画をより良いものにブラッシュアップすることもできるでしょう。また、他人や企画の第一印象に捕らわれず、その良い点を見つけることもできます。

つまり、優柔不断という短所は、「慎重」「思慮深い」「物事を多面的に見られる」という長所になる可能性もということです。そして、探せばそのようなプラスの働き方をしている場面が必ずあります。

これと同様に、

  • 怒りぽい → 正義感がある、アツい
  • 嘘つき → 創造力がある、頭がいい
  • いい加減 → 神経質ではない、大らか
  • グズ → ていねい、穏やか
  • 落ち着きがない → 活動的、行動的、積極的
  • 飽きっぽい → 好奇心旺盛
  • 空気が読めない → 情に流されず成すべきことを完遂する力がある
  • 頑固 → 自信に満ちている、価値観がしっかりしている

(3) 短所の真逆の長所があると伝える

「優柔不断」という短所の反対の長所は、「決断力・行動力がある」ですね。

実は、優柔不断な人でも、その行動のほとんどは一瞬のうちに決断していますし、さまざまな行動を積極的に行なっています。たとえば私は、自他共に認める優柔不断な人間ですが、今日の服装はまったく悩まず選びました。家内と結婚できたのも、私からのプロポーズによってです。

つまり優柔不断な私は、本当は決断力・行動力のある人間だと言えるのです。

同様に、

  • 嘘つきと呼ばれる人も、ほとんどは本当のことを語っています。
  • 怒りっぽい人も、怒りをあらわにしている時間よりも穏やかに過ごしている時間の方がはるかに長いです。
  • グズな人も、ほとんど時間通り行動しています。

要するに、人には短所と真逆の性質が必ずあるし、むしろそちらがその人のメインの性格なのです。そして、「必ずある」と信じて探せば、その長所を持っていることを裏付ける証拠がたくさん見つかります。

そこで、部下の短所が目に付いたら、その真逆の長所があるということを伝え続けましょう。その際、「君には、”案外”こういう面がある」という言い方をすると、スムーズに伝えやすいでしょう。

たとえば失敗を恐れて積極的に挑戦できないことが気になる部下に対して、その点を指摘する代わりに、「僕が見たところ、君は慎重で時間をかけて準備してから行動する反面、案外ここぞと言うとき大胆に行動する面があるんだよなぁ」というふうに。

(4) 心から「すでにそうだ」と信じる

口先だけで「あなたはすでにその力を持っている」と語っても、心が伴っていなければ部下は見抜きます。口にする前に、本気で「この部下にはすでにその力がある」と信じましょう。

(5) 言い続ける

プラシーボ効果を狙ったコミュニケーションは、続けることが大切です。1回限りではあまり効果を発揮しません。折に触れて言い続けましょう。

特に、部下が失敗したとき、行き詰まっているときこそ、プラスのフィードバックをすることが大切です。

私が行なうメンタルヘルス研修

演習

私は、福島県須賀川市を拠点に、郡山市や福島市など福島県内、また近隣県の企業・団体・施設から、メンタルヘルス対策を目的とした研修の講師に呼んでいただいています。私が行なう研修には以下のような特徴があります。

(1) スキル重視

抽象的な理論、知識を伝えて終わるのではなく、「こういう言い方をしてみましょう」「こういう位置に座って、こういう姿勢で話しましょう」というような、具体的なスキルを紹介することを大切にしています。

(2) 演習重視

コミュニケーションやストレスマネジメントのスキルは、ただ講義を聴くだけでは身につきません。そこで、座学だけではなく、ロールプレイやディスカッションなど、演習の時間を豊富に持ちます。

演習は、自分自身の悩みや普段考えていることを他の人に聞いてもらう時間でもあります。それによって、自信が付いたりストレス解消なったりします。

研修に参加してくださった方の多くが、「演習の時間が良かった」「楽しくて、時間があっという間に過ぎてしまった」という感想を残してくださっています。

研修受講者の感想

笑顔

これまでに研修を実施した企業・団体・施設からは、多くの好意的なフィードバックをいただいています。これらの感想は、プラシーボ効果を活用したコミュニケーション術が、職場において実際に役立つことを示しています。

製造業の経営者

研修を受けて、従業員へのフィードバックの仕方を見直しました。すると、以前よりも前向きな反応を得られるようになり、職場全体の士気が上がったと感じます。

保育士

言葉の力を信じる重要性を学びました。忙しい現場でも、ちょっとした言葉遣いの工夫によって、子どもたちや保護者さん、同僚たちの行動が大きく変わることを実感しました。

サービス業のチームリーダー

部下が積極的に自分の意見を出したり、自ら考えて行動したりするようになったと感じます。また、自分の子どもにも使ってみましたが、勉強や手伝いを積極的に行なってくれるようになりました。今は夫相手に試行錯誤です(笑)

プラシーボ効果の限界と注意点

上司と部下のタッグ

もちろん、プラシーボ効果には限界もあります。以下のポイントに留意しながら、今回紹介したことを実践してください。

信頼関係が重要

プラシーボ効果が発揮されるためには、上司と部下の間の信頼関係が不可欠です。信頼していない相手から何を言われても、その言葉は心に響きません。

ただ、この記事で紹介した方法を実践していけば、信頼関係は徐々に構築されていきます。効果がなかなか現われなくても、あきらめずに続けてください。

言葉だけでなく行動も必要

言葉で励ますだけでは不十分です。具体的な支援や行動が伴わなければなりません。たとえば、いくら「あなたには力があると信じている」と言ったとしても、実際には一切裁量権を与えず、部下の提案をことごとく不採用にするだけなら、部下は上司の言葉に疑念を抱くでしょう。

一貫性が必要

上司がポジティブな態度を一貫して示すことが大切です。あるときは「君にはできる」と言い、別の時には「君はダメな奴だ」と腐していては、部下は上司の言葉を信じることができません。

まとめ

研修

プラシーボ効果を職場のコミュニケーションに生かすことは、従業員のメンタルヘルス向上に大いに役立ちます。上司が部下にポジティブな影響を与えることで、職場全体の士気や生産性が向上し、企業にとっても大きなメリットとなります。

そして、この記事を読んでいるあなたは、部下とのコミュニケーションをさらにより良いものにし、部下の成長をサポートすることがすでにできていますし、今後もますます部下にとって頼りがいのある上司になれるはずです。

なぜなら、あなたは「そういう上司になりたい」という強い願いを持っておられるからです。そうでなければ、わざわざネットを検索してこの記事にたどり着いたりはしません。その思いは必ず実を結びます。

また、この記事を読んで、自分の職場でもプラシーボ効果を生かしたコミュニケーションを取り入れたいと思われた方、特にメンタルヘルス対策担当者様、社内研修担当者様は、以下の公式サイトからぜひお気軽にお問い合わせください。
 → オアシス・カウンセリング・サービス公式サイト

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