部下のやる気の引き出し方【上司のコミュニケーション術】メンタルヘルス研修の内容と感想
上司の大切な仕事の一つは、部下からやる気を引き出して業務に当たらせることです。
私は企業・団体・施設の福利厚生の一環として行なわれる、メンタルヘルス研修の講師を務めています。特にリクエストが多いテーマの一つが、「従業員のやる気を引き出す上司のコミュニケーション術」です。
部下との適切な対話や信頼関係の構築は、職場環境を良好にし、従業員のモチベーション向上にも寄与します。本記事では、部下のやる気を引き出すために上司が今すぐ実践できる具体的なコミュニケーション術を解説するとともに、私の研修に参加してくださった方の感想を紹介します。
目次
部下のやる気を引き出すポイント
部下がやる気を失う理由の一つに、「上司とのコミュニケーション不全」があります。上司が一方的に指示するだけで部下の声を聴こうとしなかったり、放ったらかしで適切なフィードバックを与えなかったりすると、部下の意欲を低下させることになります。
部下のやる気を引き出すために、以下のポイントを押さえましょう。
(1) 傾聴と共感
積極的に耳を傾ける
公式・非公式に1対1の面談を頻繁に行ない、部下の意見や悩みの声に、積極的に耳を傾けましょう。
その際、うなずきや相づちをしっかり入れて「ちゃんと聴いているよ」という無言のメッセージを送ります。また、途中でさえぎらないで、最後まで聴くことが大切です。
共感の言葉をかける
部下の話の中で、特に気持ちとそう感じた理由に焦点を合わせて聴きましょう。そして、その気持ちに寄り添い、「あなたの気持ちを受け止めましたよ」というメッセージを送ります。
たとえば、「大変だったね」「それは残念だったなぁ」「それは悔しかったでしょう?」「一生懸命がんばったよね」など。
質問する
「はい」「いいえ」で答えられるYes-Noクエスチョンよりも、相手の考えや気持ちを聴くオープンな質問の方が効果的です。そうすることで、「あなたとあなたの働きに関心を持っている」というメッセージが伝わります。
なお、部下のダメな部分をあぶり出して追い詰めるような、「尋問」にならないよう注意してください。そうではなく、部下の中から「宝探し」をするイメージで質問するようにしましょう。
(2) 肯定的なフィードバック
良かった点を具体的に挙げてほめる
ただ「よくやった」と伝えるだけでなく、「顧客のニーズをしっかりとらえた点が良かった」などと、良かったポイントを具体的に指摘しながらほめましょう。その方がほめ言葉が部下の心に響き、やる気を引き出すことができます。
たとえ望んだ結果が得られなかったとしても、その過程で部下は望ましい行動をしたり、がんばったり努力したりした点があるはずです。それを見つけ出してほめましょう。
改善すべき行動を指摘する
部下が望ましい結果を出せなかったとき、あるいはこのままだと失敗しそうだというとき、頭ごなしに怒鳴りつけたり、相手の性格ややる気の有無、あるいは学歴・経験・年齢・性別などの属性を攻撃したりしないよう注意しましょう。やる気の面では逆効果になることがほとんどですし、パワハラだと受け取られてしまうリスクもあります。
そこで、部下がうまくやれていないときには、性格ややる気、属性ではなく「行動」に注目します。すなわち、部下が行なっている望ましくない「行動」を指摘し、代わりにどういう「行動」をして欲しいか伝えましょう。
期待を伝える
部下が順調に成果を上げていてもそうでなくても、いつも「期待しているよ」という言葉かけをしましょう。特に、相手が失敗したり停滞したりしているときこそ、肯定的な言葉かけを心がけてください。
(3) 目標設定と進捗管理
一緒に目標を設定する
上司が一方的に目標を与えるのではなく、部下と一緒に目標を設定し、それを共有します。それにより、目標に対する部下の当事者意識を高められます。
部下が業務に慣れていないうちは、目標設定だけでなく、その目標を達成するための行動計画も一緒に立てると良いでしょう。
進捗を定期的に確認する
定期的な面談などで、共有した目標についての進捗を確認します。必要があればアドバイスや励ましなどサポートしましょう。
小さな成功を積み重ねる
一朝一夕では達成できない大きな目標を立てた際は、そこに至るまでのプロセスを考え、複数の下位目標を設定させます。これによりこまめに達成感を味わうことができ、部下のやる気が引き出されます。
(4) 承認と感謝
感謝を伝える
部下がやってくれていること、部下がそこにいてくれることについて、頻繁に感謝の言葉をかけましょう。感謝はほめ言葉以上に強力なエネルギーを与え、やる気を引き出します。
チームへの貢献を評価する
ほとんどの仕事はチームプレーです。誰かが成果を上げた背後には、縁の下の力持ちとして支えてくれた人が必ずいます。上司であるあなたはそれを見落とさず、その働きを認め、感謝しましょう。
成長を認める
他人と比較してほめられるのは、あまり気持ちがいいものではありません。比較するなら、他人ではなく過去のその人です。半年前、1年前の部下と今の部下を比較して、成長している部分が必ずあります。それを認めたりほめたりしましょう。そうするなら、部下は「もっと自分はやれる」と信じられるようになり、やる気が引き出されます。
(5) 信頼して任せる
部下を信頼していない上司は、何でもかんでも自分が管理したくなります。しかし、部下は自分が上司に信頼されていると感じることで、やる気が引き出されます。可能な限り、部下の考えや希望を聞き出し、自主性を尊重しましょう。
(6) モデリング
上司自身が常に学び続け、目標設定や行動計画を立て、問題解決している姿を見せることで、部下も成長のための意欲を高めることができます。
特に、物事がうまく行かないときの上司の姿は、部下たちにとって大切なモデルです。あなたがつまづきながらもへこたれずに前向きに壁に立ち向かっていく姿は、日々奮闘している部下たちの心にも火をつけます。
メンタルヘルス研修参加者の感想
私が講師を務めたメンタルヘルス研修で、部下のやる気を引き出す方法についてお話しした際、以下のような声をいただきました。
- 自分自身が若い頃に怒鳴られたりプレッシャーを与えられたりしてきた経験から、自分も部下に同じような接し方をしていました。それではあまり意味がないこと、そしてより効果的なやる気の引き出し方を知れて良かったです。
- 一つ一つのスキルについて演習を交えながら学べたので、現場で実践できそうだという自信が付きました。
- 部下のやる気を引き出すためにほめることばかり考えていましたが、感謝することの方がより効果的だと学べたのは目から鱗でした。
- 自分の部下たちが頼もしい仲間だということに改めて気づけました。それを言葉に出して伝えたいと思います。
- どうせ退屈な講義だと勝手に思っていましたが(すみません)、いい意味で期待を裏切られました。楽しく学ぶことができました。
まとめ
部下のやる気を引き出すためには、一方的に指示を出したり、圧力をかけたりするのではなく、部下一人ひとりを理解し、共感し、サポートする姿勢が重要です。今回の記事を参考に、部下とのコミュニケーションをより良いものにしていってください。
私は、福島県須賀川市を拠点に、郡山市・福島市・会津若松市・いわき市など福島県内、また近隣県の企業・団体・施設様のメンタルヘルス研修を行なっています。特に「すぐに役立つスキル」をお伝えすることを旨としており、ロールプレイやディスカッションなどを交えて楽しく学んでいただけます。
研修内容は、メンタルヘルス対策の担当者様との事前打ち合わせによって決定します。まずは、以下からお気軽にお問い合わせください。
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